2018年12月英国高等教育及び学術情報

2018.12.20

(1)政府は2年学位課程で学生の選択肢を広げる

(2)リサーチ・イングランドが知識交換評価制度の協議に先立ち文書を公開

(3)キャリア早期段階の収入への学士号の影響

(4) Tレベル制度への資金配布についての協議が開始

(5)大学が成績のかさ上げへの対策に向け前進

(6)大学・科学担当大臣が辞職、政府のEU離脱協定案に抗議

(7)MadeAtUni:大学での発見トップ100

(8)オックスブリッジ入学者の多い8つの学校:イングランドの学校の4分の3の学校からの入学者数と同数

 

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(1)政府は2年学位課程で学生の選択肢を広げる

2018年11月18日、教育省(DfE:Department for Education)と大学担当大臣Sam Gyimah氏は、数十万人の生徒が大学での学びに関してこれまで以上の選択肢を手にすることになるとして、2年制の学位課程の拡大を発表した。このことで、新しい教育機関の教育界の参入と学生にとって労働市場への早期参入が促進される。

この発表は、高等教育進学を希望する人々、特に成人学生のために、前例のないほどの選択肢と柔軟性を産み出す、より短い大学課程(俗に短期学位取得コースといわれている)を量産するという提案に関する協議を経てのもの。

英国の高等教育は世界に名高く、世界の上位10位に4大学が入っており、上位100位には18大学が入っている。今回の発表内容は、選択肢の拡大、そして英国の大学で学ぶことを選ぶすべての学生のために一層の多様性を産み出すことによって、英国の世界クラスの教育制度の上に設けられるものである。そしてそれは学生により学費に見合う価値を提供するための政府活動の一部でもある。

短期学位取得コース設置は、ただ学生が通常の学位コースより1年早く卒業することを可能とするだけでなく、優秀な人材に1年早く手が届くことになる企業にとっても歓迎できる後押しとなる。これは、中でも注目すべきことに、認定機関が急速な卒業生の雇用のための短期学位取得コースの開発を行なっている会計学、財務管理学、法学のことであるが、それらに限られない。短期学位取得コースは、他の大多数の課程にもでも多く採用されることも期待されている。

短期学位取得は、通常の学位とまったく同等の質保証の基準を満たし、全く同レベルの資格を提供する。例えば、2年間の短期学位取得コースでは、30週の教育で3年かかる学位を45週の教育で2年へと濃縮することになる。

協議の回答の一環として、Sam Gyimah氏は、短期学位取得コースのための新しい学費にゴーサインを出した。短期学位取得コースを選んだ学生は、通常の3年制課程に比べ最低でも20%(5,500ポンド)の学費を得することになる。協議に対する回答としての新たな学費上限は、議会の承認を条件として、翌日(11月19日)に発表予定である。

GOV.UK:Government boosts student choice with two-year degrees

 

(2)リサーチ・イングランドが知識交換評価制度の協議に先立ち文書を公開

2018年11月19日、リサーチ・イングランド(RE:Research England)は、将来の知識交換評価制度(KEF:Knowledge Exchange Framework)に関して高等教育機関が協議に備えるためのものとして、3つの文書を発表した。

これらの資料については以下のとおりである。

(1)一つめの報告書“KEFのエビデンス収集呼び掛けへの反応”は、KEFの適切なやり方、そしてKEFで用いる適切なデータに関してREに提出されたエビデンスから浮かび上がってきた重要な点を要約したものである。このエビデンス収集の呼び掛けは2017年12月になさされたもので、どのようにKEFが高等教育機関を公平かつ有意義な方法で比較するか、どのようなデータであればKEFを特徴付けることに用いうるか、そしてどのようにKEFの評価基準をわかりやすく役に立つ方法で可視化するか、に関する提案を求めたものである。

(2)二つめの報告書“KEFクラスター分析レポート”には、KEFの評価基準の発展を特徴付けるであろうイギリスの高等教育機関の初期クラスター分析が含まれている。REは、協議に先立ち手作業で一部の大学を異なるクラスターに、特に含まれる高等教育機関の数が少ないものに割り当てることを含め、この分析を更に発展させる。

(3)最後の“KEFテクニカルノート”は、KEFの開発におけるUKリサーチ・イノベーション(UKRI:UK Research and Innovation)のデータの他の情報源の役割を説明している。

RE:Research England publishes first KEF documents ahead of consultation

 

(3)キャリア早期段階の収入への学士号の影響

2018年11月27日、英財政研究所(IFS:Institution for Fiscal Studies)は長期的教育成果(LEO:Longitudinal education outcomes)の管理データを利用し、個個人の大学入学前の特性を計算に入れた上で、早期キャリア段階における個人の収入に高等教育が及ぼす影響の最新予想を作成し、報告書として発表した。これは、将来有望な生徒にとって、大学ではどこで何を学ぶか、そして大学に行くかどうかを選択するための重要なエビデンスとなる。発表の概要は以下のとおり。

IFSは、29歳時点での収入に関し、高等教育を受けているということの全体的平均的な影響を算定した。そして、2000年代中盤から後半にかけて高等教育に進んだ者を元に、この影響が異なる学位の学科や異なる大学で学んだ個々人の間でどのように違っているかを示した。また、IFSは、GCSEの結果や、数学や科学(STEM)の科目をAレベルで受けたかどうかなど、大学以前の学力が異なる学生にとって、収入等の見返りがどのように違いうるかについても調査している。また、IFSは、高等教育を受けた卒業生よりもむしろ高等教育を開始する学生に焦点を当てている。これは、進路の選択が将来有望な生徒が直面する決断だからである。

この報告書は、教育省(DfE:Department for Education)からの委託を受けてIFSが報告する一連のものの中で2つめの報告で、LEOのデータセットを利用して高等教育学位の価値に関する情報を改善するものである。IFSがDfEと提携して開発したデータセットは、イングランドの学生の情報を中等教育学校、カレッジ、大学、さらに労働市場まで追跡しているものである。今回の報告書では初めて、高等教育を受けた者と、同様な特徴を持つが高等教育を受けていなかった者との比較にデータセットを利用し比べている。

すべての推計では、(そうではないと明記されていない限り)“持続した雇用”を条件として、18歳で高等教育に進学することの29歳時点の年間総収入の効果が報告されている。高等教育に進学した学生と、しなかったがGCSEでA*-Cを最低5つ取った者とを、以前の成績の違い、第五主要段階(注:16歳から18歳にかけての教育課程を指す)での科目選択そして家族背景を照らし合わせて調べつつ比較している。

この先駆的なデータセットは、高等教育に進学したものとしなかったものの多くの違いの説明を可能にするが、情熱や好みなど、進学決定に影響するほかの要素は含まれていない。また、これらの推計は、大学というものの金銭的な見返りに焦点を当てているが、学位が持つ幅広い社会的利益については十分に反映されていない。従って、これらの結果を解釈する際には十分な注意が必要である。

主な発見は以下のとおり:

・高等教育を受けた者はそうでないものと比べて平均収入が多い。29歳時点で、高等教育を受けた平均的な男性は、そうでない平均的な男性(GCSEでA*-Cの成績を5つ得た者)と比べて約25%多い収入を得ていた。女性の場合、この収入差は50%以上だった。

・こうした違いの大部分は、大学入学前の学力の相違によって説明可能である:高等教育を受ける典型的な学生は、進学しない者と比べ、大学入学以前の学力がより高く、また裕福な家庭の出身であることが多い。つまり、そのような人は大学に行かなくても収入が高くなる可能性が高い。

・大学入学前の特徴の違いについては既に説明したが、高等教育を受けたということが収入に及ぼす平均的な影響は、29歳時点で女性では26%、男性では6%だと推計される。高等教育を卒業したことの影響に焦点を置いた場合は、彼らの得る収入増加の見返りはそれぞれ28%及び8%に上昇する。

・女性の方が高い見返りを得られるということについては、高等教育を受けた女性はそうでない女性に比べて長時間働くということが原因であるかもしれない。労働時間に関する影響は原因かもしれないが、もし大卒者が子供を持つことを遅らせているというのであれば、これは29歳以降よりも29歳時点の方でより大きく影響している可能性がある。

・重要なことは、29歳という年齢は個人のキャリアの中では比較的初期である。30歳以降、高等教育を受けた男性の収入がそうでない男性に比べよりより急速な増加を続けるという強い証拠がある。これは、男性にとっての高等教育の見返りが、現時点で推測できるものよりも後の年代でさらに大きくなってくるという結果となりそうである。女性の場合、受けた教育タイプごとで30歳以降の収入が分かれていく傾向はあまり明確ではない。

・すべての学位が同様というわけではなく、学科の選択は見返りに関して非常に重要な決定要因であるように思われる。男性の場合、クリエイティブアート、英文学または哲学を専攻した者は、実際のところ、似た背景を持つ高等教育に全く行かなかった人々よりも29歳時点で低所得という結果になっている。対照的に医学、経済学を専攻することで20%収入が増えている。女性の場合、負の見返りをもたらす学科はなく、経済学や医学を専攻することで29歳時点の収入は約60%増す。

・見返りにはかなりの違いがあるため、高等教育機関の選択も非常に重要であるように思われる。男性の場合、20%以上の増収という見返りをもたらす大学が18ある一方、29歳時点で統計的に平均して明確な負の見返りをもつ高等教育機関が12(男性学生の4%に当たる)ある。女性の場合、平均して見返りは大きいにもかかわらず、66の高等教育機関で20%以上の増収という見返りがある一方、それでもなお29歳時点で統計的に明確な負の見返りを持つ高等教育機関が2つ(女性学生の0.4%に当たる)ある。

・大学に入った男性の67%と女性の99%(従って学生の85%)は、平均して29歳時点で明らかに正の見返りを得ている。

・男女とも、全ての学科、全ての大学において幅広い見返りの違いがあった。例えば、ケンブリッジで学ぶことは男女とも平均で約30%の増収という正の見返りを生ずるが、しかし一部の学科を選択することは、例えばクリエイティブアーツでは、実際のところ大学に全く行かなかった者より29歳時点の収入は低くなるという結果になるようである。

・高等教育に対する見返りは、学生のタイプによってもかなり異なる。高等教育を受けたということは、AレベルでSTEM科目を取っておらず以前の成績(GCSEの成績に基づく)の低かった男性の29歳時点の収入を4%増加させるだけである。これは、AレベルでSTEM科目を取らなかったがGCSEの成績が高かった人たちの20%にしか当たらない。以前の成績が悪かった生徒は、クリエイティブアーツやコミュニケーション及びスポーツ科学のような見返りの低い科目を専攻しやすく、また見返りの低い大学に行きやすいため、収入が低くなる。

・しかし、これが唯一の説明ではない。彼らは例え、以前の成績がより良かった人たちと同じ学科や同様な大学に入ったとしても、より低い見返りを得ることとなる。

 

表:全体的な見返りと、以前の成績グループ別の見返り(注:IFSの表を訳したもの)

AレベルでSTEM科目なし

AレベルでSTEM科目あり

全体

低成績

中成績

高成績

低成績

中成績

高成績

男性

6%

4%

8%

20%

11%

9%

5%

女性

26%

23%

25%

31%

22%

16%

23%

 

・これは、高等教育システムの拡大の影響を検討する際、明らかに重要なことである。IFSが調査した期間では、GCSEでA*からCまでの成績を5つ取ったが大学に行かなかった全生徒の70%が、AレベルでSTEM科目を取らない場合、この従来の成績が低いグループに入っている。

・以前の成績が高く、AレベルでSTEM科目を取っている男性は推計5%の収入増という見返りを受けているが、これは期待されているよりも低いものかもしれない。これは大きく差がある:法学、医学または経済学を学ぶことは彼らの収入を約20%増やし、この集団にとってラッセルグループに行くことのメリットは約10%の増収である。一方で、英文学、コミュニケーション、心理学、語学及び歴史学を学ぶことや、ポスト1992大学(注:比較的新しい、1992年の制度改正以降の大学)またはその他の大学に通うことは、実際のところ、このグループにとって大学に行かなかった場合より(もちろん、これらの個々人は収入を最大化しようという以外の理由でそれらの選択をしているのかもしれないが)低い収入に繋がるようである。全体で、このグループのうち高等教育に行っていないのは5%だけであって、それはかなり珍しいことのようである。実際、彼らの29歳時点での平均収入は年間約40,000ポンドと非常に高い。そのため、これらの特徴的な推計は取り扱いに注意が必要である。

・女性の間では、いくらか同様のパターンが現れているものの、全てのグループで高等教育に対する見返りは高かった。以前の成績が高く、AレベルでSTEM科目を取っていない女性は、以前の成績が低かった女性たちよりも高い見返りを得ている。男性とは異なり、もし以前の成績が低くAレベルでSTEM科目を取っていない女性が成績の高かった女性と同じ科目を専攻したとしても、低い見返りを得ているというエビデンスはない。その代わり、このグループに対する低い見返りは、ソーシャルケア、心理学、教育学のような低い(それでも著しく有意義なものではあるが)見返りの科目を専攻する傾向が高いことによって起こっているものと思われ、また彼女たちがより見返りの低い大学に入りがちであることによるものと思われる。

 

【メディアの反応】

○BBC News

BBC Newsはこのことについて、29歳時点の給与分析の結果では、Oxford大学で数学を専攻した女性とBristol大学で経済学を専攻した男性が、大学に行くことによって最も収入増を得ているとなどして伝えた。BBCの報道ぶりの概要は以下のとおり。

学位を持つ女性は、持たない女性より平均28%多く収入を得、学位を持つ男性は持たない男性より平均8%多く収入を得ている。

しかし大学に行った男性の3分の1は、その学費の額にもかかわらず、“取るに足りない”ほどの収入増しか得ていなかった。

男性にとって最も所得が低かったのは、Sussexでの哲学専攻、女性にとって最も所得が低かったのは、Westminsterでコンピュータ専攻であった。

この報告書は、イングランドの学校に通い、その後イングランド、ウェールズ、スコットランドの大学に進んだ人達の納税記録を基にし、大学進学が収入にどのような影響を与えるかを調査したものである。

この調査は、大学卒業者が平均50,000ポンドの借金を抱えて卒業するにもかかわらず、社会的な恩恵はさておいてその金額に見合う価値があるかどうかを問いかけている。

学位を持つ女性は、学位を持たない女性より平均で年間6,700ポンド多く稼いでおり、ほとんどどの課程、大学でも女性は収入が増進している。しかし男性の場合その差は縮まり、学位を持つ男性は学位を持たない男性より平均で(年間)2,700ポンド多い収入であった。

大学に行ったが、その大学が学位を持たない男性と比べて、収入に対し“取るに足りない程度または負の影響”をもたらしている3分の1の男性への非情な問いがある。彼らは学費に値するだけの価値を得ているのか?

報告書では、学位を持つ女性は学位を持たない女性と比べて非常に高い収入を得ているため、女性にとって学位を得ることは明確に“優良な投資”であるとしている。

その原因の大半は、とりわけ学位を持たない女性は低所得者になりやすく、そしてそのために彼女たちと学位取得者との間の差が大きくなっていきやすいからである。これは、学位を持たない女性が、特に給料の少ない仕事に就きやすいからであるかもしれない。しかし、学位を持たない女性は学位を持つ女性より、20歳台で2倍、パートタイム職として働くことが多いという事実もある。これは、学位を持たない女性は学位を持つ女性より若いときに子供を持つ傾向があるということである可能性がある。

そのため、報告書で述べられた女性にとっての大きな利益は、フルタイムで働く学位を持った女性とパートタイムで働く学位を持たない女性の比較も含んでいる可能性がある。

また、報告書では、専攻した分野によっても収入の大きな違いがあることを示している。

給与水準の上位学科は、医学、経済学、数学、ビジネス、法学であった。

女性で医学を専攻した者には、学位を持たない女性と比べて78%多い収入が見込まれる。

低位の学科は、クリエイティブアーツ、哲学、英文学であった。

男性で、これらの学科を専攻した者は、大学に行かなかった男性よりも平均して低い収入を得ており、負の見返りを得やすい。クリエイティブアーツを専攻した男性は、学位を持たない男性より14%低い収入が見込まれる。

表の上位では、4つのロンドンの大学(LSE、Imperial、King’s College、SOAS)とOxford出身で最も見返りを得ている女性に、目立った収入の割り増しがあった。

BristolとCambridgeは男性学生にとっての高収入者リストに入っている。

学位を持った男性の下位には、Bath Spaのような若い大学や、Leeds Cityのような継続教育を行なっているカレッジが含まれる。

Boltonは例外で最下位となっているが、ほとんどの女性が、給料の上昇をもたらす大学に在籍している。若い大学が将来の収入にあまり良い影響を持たないということは、それほど驚くようなことではないかもしれない。

また、Ravensbourne、Goldsmith、University of Artsなどの芸術系の教育機関も、低収入となることは予測可能かもしれない。

しかし、負の成果を出している大学、つまり男性の収入が平均で学位を持たない人よりもより低い26機関や、見返りが2%以下の39機関には、詳細な調査が実施されるかもしれない。

Essex、Hull、Leicester、Sussex、Keele、Bradfordは全て、男性学生にとって、収入に10%以下の割り増ししか持たなかった。

専攻と大学の選択を一緒に見た場合、高収入・低収入が極端な結果となる。

女性では、Oxfordでの数学が最も高く、LSEでの経済学が続く。University College Londonの経済学は大きな見返りをもたらし、Imperial Collegeでの医学も同様である。

実際に、最も高い収入を得ている者は、ごく一部の大学で取られた数学、法学、医学、物理学、経済学の限られた組み合わせでできている。

学位を持つ男性も同様で、Bristolでの経済学、Oxfordでの物理学がトップであった。

女性の場合、最も給料が低いのはWestminsterでのコンピュータ専攻である。Boltonでの心理学専攻も下位5位に入っている。

しかし、課程がどれだけ成果へ影響するかを示すのであれば、Cambridgeのクリエイティブアーツ専攻は高収入をもっとも与える可能性が低いところに分類されている。

男性にとって、Sussexの哲学専攻は見返りの率が最低となる場所としてランク付けされておりOxfordでの語学専攻もまた、男性の収入下位5位に入っている。

大学担当大臣であるSam Gyimah氏は、若者が大学について、情報を得た上で選択をできるようにすることが重要であると述べている。これは、彼らが学位から、支払っただけの価値を得るということを考えるための助けとなる。彼は、このことによって、そういった低い見返りしか提供できないように見える課程に対して“光を当て”てもらいたいとも考えている。しかしその背景には、イングランドでの将来の学費を検討する見直し作業という大きな政治的文脈がある。この最新の報告は、次のような幾つかの非常に厄介な問い掛けをなしうる。

・収入においてこういった異なる成果がある中で、学部や大学に関わらず、学生に9,500ポンドを請求することは妥当なものなのか?

・多くの人、特に男性にとって、見返りが取るに足りないか存在しないようなものなのであれば、こういった高い学費や負債は持続可能性があるものと言えるのか?

BBC News:Biggest winners and losers from degrees[2018年11月27日付]

 

(4) Tレベル制度への資金配布についての協議が開始

2018年11月27日、教育省(DfE:Department for Education)は、カレッジ、学校や16歳以降の教育機関は新しいTレベル制度(がどのように資金供給を受けるべきか)に関し意見を持つことが奨励されるとして、3ヶ月間に渡る意見交換の場を設けることを発表した。教育省によれば、このことは技術教育を英国が世界に誇るAレベル制度と同等な位置付けにする一世一代の機会だとされている。

Tレベル制度は技術的にはAレベル制度と同様で、さらに教室での理論、実践的な学習、業界での実地訓練の組み合わせたものとなる。初となるTレベル制度の課程は教育と保育、建設及びデジタル分野で、50以上の継続教育機関及び16歳以降の教育機関で2020年9月から開設される予定である。さらに財務会計、工学技術&製造、クリエイティブ&デサインといった分野の22課程が2021年以降に登場する予定である。

Tレベル制度はこれらの技術資格の恩恵を受ける業界と共に開発されている。Tレベル制度を受ける若者が雇用者の求める知識と技能を備えることを確実にするような課程の内容の設計を支援するため、富士通、Skanska、GlaxoSmithKlineを含む200以上の企業と協力している。

Tレベル制度は新資格として完全に世に出るまで毎年50億ポンドの追加投資により支えられる。今回の協議は、政府がその増加する投資額をどのように配分するつもりなのかを明らかにするものである。その中の一部として:

・Tレベル制度がより大きく、より拡大されたプログラムになるということや、それに従ってで既存の学習プログラムより多額の資金を惹き付けるという認識。

・規模の違いを反映するための、異なるTレベルに異なる割合での資金配布の提案。

・追加資金は、Tレベルの生徒でまだ英語や数学が求められる基準に達していない者がこれらの重要な技能を身に付けていけるよう支援するためのものであることの確認。

・新しいTレベルプログラムの重要な要素となる、業界での勤務を教育機関が築くのを支援するために資金配布がどうなされるかの詳細。

・18歳のTレベル学生がより多くのTレベルプログラムのため必要となる時間を持つことができるよう、彼らのために追加投資をするということ。

政府は最近、最初のTレベル教育機関が質の高い設備や施設に投資することを支援するための追加の3千8百万ポンドについても発表している。

GOV.UK:T Level Funding Consultation Launched

 

(5)大学が成績のかさ上げへの対策に向け前進

2018年11月28日、英国大学協会(UUK:Universities UK)は、同協会と他の高等教育機関が、成績のかさ上げが生じているという見解に対して取り組み、学生の取得する成績とその成績の価値に対する国民の信頼を保証するため、成績分類システムの幅広い変更を計画していることを発表した。

今回発表された報告書はUUK、GuildHE(高等教育界の改善や発展を目的として政府や高等教育関係機関と協働している営利組織)、大学質保証機関(QAA:Quality Assurance Agency)が、英国質保証常任委員会(UKSCQA:UK Standing Committee for Quality Assessment、高等教育界主導による高等教育の質評価方法監視機関)のために、優秀な成績(First and Upper–second class degree)を取得した大学卒業生の数が増加した背後にある理由を調べたものである。

報告書は、教育や学習への追加投資や、学生の意欲の向上を含む幅広い要因が優秀な成績の増加に繋がっている可能性を示唆した。しかしこのように優秀な成績の増加傾向が続くことは、英国の大学の学位の価値の信頼性を損ない、雇用者や学生にとって成績分類が役に立ちにくいものとなる危険性がある。

同日、UKSCQAは、学位資格の価値を保護していくため、報告書の勧告が高等教育界によってどのように展開され、実行されていくかに関するフィードバックを得るために、英国全土にわたる協議作業を開始した。

学位の成績分類はそれぞれの機関の問題で、そして学位は、学者による評価、内部・外部からの評定や教育界全体の枠組みに基づいて授与される。

大学は、学位資格の価値を保証することや、学生が受け取るであろう結果への国民の信頼を保つことに専心している。従って、報告書は、学位資格の価値を保護していく活動につながるよう、大学は高等教育界全体にわたる意思表明を打ち出すべきだと推奨している。この意思表明には、下記のような約束が含まれる。

・機関レベルで、学位の成果に関するエビデンス、つまり外部機関が保証したデータ付きの、全ての成績段階の学生が示した技能と知識を見直し、公開すること。これにより、大学の運営機関は、その大学が自らの学位資格の価値を保護していることを保証することができるようになる。

・それぞれの学位の成績分類にどのような成果の質が必要であるかを示すために、全大学で用いられる共通の判断基準に合意すること。

・学生の学位の最終的な成績分類を分かりやすい書式で決めるため、ある慣行が広く受け入れられている規範となぜ異なっているのかを含め、大学が使っている成績付けのシステムと過程とを説明し、公開すること。

また、報告書の中では下記のことも記載されている。

・学位の成績分類は、いくつかの大学のランキングによって明確に特徴付けられている。学生獲得の競争が激しいところでは、大学にはランキングの中でよい成績を上げるための動機がある。協議作業の一環として、大学は、そうした動機が、ランキング内の上位成績の数と結び付いた組織の業績に、成績のかさ上げを誘発するような影響を招く可能性を減らすような処置を取るべきかどうかを検討することになる。

・大学は、成績の端数処理(例えば、純粋な素点の端数を処理して最も近い整数にすること)がいつ、どのように用いられるのか、そして単位の「手加減」(一般的には、低い点数に目をつぶったり、他の単位の成績を考慮に入れてあげたりすること)の慣行を継続すべきかどうか、再検討するべきである。

・大学は、学位の結果に関するデータを一般の人や大学が容易に比較できるようにする情報と方法を開発するために、HESA(Higher Education Statistics Agency、高等教育統計局)と協力すべきである。

UUK:Universities taking steps to tackle grade inflation

 

(6)大学・科学担当大臣が辞職、政府のEU離脱協定案に抗議

2018年12月1日、BBC Newsは、大学・科学担当大臣であるSam Gyimah氏が、政府のEU離脱協定案の中でEU離脱後の英国がガリレオ測位システム(Galileo Sat-Nav System)*から撤退するとされていることに抗議して辞職したと報じた。

Gyimah氏はMay首相の協定案をめぐり政府を去った10人目の人物となった。

*ガリレオ測位システム:EUが独自開発している、GPSに類似した全地球航法衛星システム。

BBC news:Brexit:Sam Gyimah resigns over Theresa May’s ‘naive’ deal

 

その後、2018年12月5日、新しい大学・科学担当大臣としてChris Skidmore氏が任命された。

Skidmore氏の略歴

オックスフォード大学で歴史を専攻し、その後同大学の大学院でも学ぶ。“エドワード6世:失われたイングランド王”等数々の歴史書を著作している。保守党議員として2010年にKingswoodから初当選しており、2010年から2013年まで健康特別委員会、2012年から2014年まで教育特別委員会に属した。2013年首相官邸政策委員会の委員となり、2014年にのその副議長に任命された。2015年5月に財務大臣議会担当秘書官に任命された。

GOV.UK:Chris Skidmore MP

 

(7)MadeAtUni:大学での発見トップ100

2018年12月6日、英国大学協会(UUK:Universities UK)は、MadeAtUniキャンペーンの一環として、大学が行なった発見トップ100を公表した。UUKは、麻痺した人々を助けるコミュニケーション用の未来的なヘッドフォーン、目の見えない人のための高性能化されたベビーカー、水なしで流せるトイレ、ラグビーをもっと安全にするための新しいスクラム技術開発など、これらは今日、英国の大学から出てきた100の最も意義のある顕著な技術躍進とみなされるとしている。

ペニシリンの開発、持ち運び可能な細動除去器の発明、プラスティック公害対策、超音波検査、MRI、生活賃金の定義の開発を含む、人々の日常に変革をもたらした発明、発見、社会的革新を称賛するために、英国の最も顕著な技術的躍進の一覧表が作成された。

一覧表では、放射線治療を受けている女性のために開発されたブラジャー、サッカーを利用して分断コミュニティ間の紛争を解決するというスポーツの主導の取り組み、ゲームや携帯電話中毒の原因の研究、また発展途上国において何百万人もの人々の生活を一変させるであろうとされる尿を電気に変えるという新技術を含んだ、あまり世に知られていないが生活を変える極めて重要な技術的躍進についても注目している。

この一覧表は、#MadeAtUniキャンペーンの一環として、大学はただ学生を教育しているだけではないということを示し、大学が人々の生活にもたらす違いを活気付かせるために、英国大学の統括組織であるUUKによって編纂された。

100以上の大学から推薦案件が提出されている。それらは健康、技術、環境、家族、コミュニティ、文化、スポーツの分野にわたっている。

同キャンペーンは、コンサルタント企業Britain ThinksがUUKのために実施した独自調査の後に行なわれるものであり、その調査では、一般の人々は英国の大学に誇りを持っているが、大学がもたらす利益について学部生の教育以上のことはほとんど理解していないということが判明していた。この調査結果は、英国の大学がどのように研究分野で世界を主導しているかを聞くことに人口の大部分が興味を持っている一方、大半の人々はMRIや超音波検査といった世界の重要な発見の一部には英国の学術が隠れているということに気付いていないということを明らかにしている。

UUK:MadeAtUni: universities top 100 discoveries (一覧表PDFあり)

 

(8)オックスブリッジ入学者の多い8つの学校:イングランドの学校の4分の3の学校からの入学者数と同数

2018年12月7日、サットントラスト(The Sutton Trust:教育を通じて社会流動性を促進することを目的とした基金)は、大学入試機関(UCAS:Universities and Colleges Admissions Service)のデータを基に、過去3年間オックスブリッジ*入学者の傾向として、イングランド全体の学校の4分の3に当たる学校(2900校)からの入学者と同数の入学者が8つの優秀学校およびカレッジから出ていることを発表した。

報告書“Access to Advantage”は、イングランド全域で大学への入りやすさがどのように異なるのかをより明確に示すため、学校種ごと、地域ごとに2015から2017年の統計群の大学入学率を分析している。その結果は、オックスブリッジ**,310人が入っており、一方同期間に2人以下の入学者しか出していない学校2,894校の合計は1,220人であった。

報告書は、私立校出身の生徒がラッセルグループの大学に合格する率は公立校に比べて2倍以上高く、オックスブリッジの場合の入りやすさの差はさらに大きく、7倍近くとなるとしている。また、オックスブリッジやラッセルグループの大学に出願した私立校出身者は、公立校よりも合格する確率が高くなっている。

オックスブリッジへの出願の3分の1以上(34%)が私立校の生徒からのものである、彼らは合格定員のより多くの割合(42%)を占めている。しかし、オックスブリッジへの出願者数の32%が公立校出身である一方、公立校出身者は合格者の25%でしかない。生徒全体では7%が私立校に通っているが、一方でAレベル試験を受けた割合では18%が私立校に通っている。

またこの分析は、オックスブリッジに合格する10代の者の比率の、大きな地域的違いも示している。Halton、Knowsley、Lincolnshire、North Lincolnshire、Portsmouth、Rochdale、Rutland、Salford、Southampton、Thurrockを含むこの国の一部の場所では、調査が調べたこの3年間において、公立校からオックスブリッジへ2人かそれ以下の合格者しか出していない。

この格差がAレベル試験の結果の違いによるものである一方、今回の調査では同様な試験結果の学校でも優秀大学への進学率に大きな違いがあることが明らかになった。私立校で全学校の試験成績の上位5位に入っている校の生徒のおよそ4分の1(23%)はオックスブリッジに出願するが、同様に高い成績を上げている公立校グループにいる生徒では11%しか出願をしない。オックスブリッジに出願した上位5位校出身者のうち、私立校では35%が合格したが、公立校では28%でしかなかった。

また、すべてのタイプの学校からオックスブリッジに合格した生徒は、平均して同様の成績を修めていることがわかった。これはAレベル試験の結果でいうとA*A*A*(注:A*は最上級のもの)に等しい。サットントラスは大学に対して、成績条件の緩和を含め、入学希望者が直面する環境の違いを理解するために入試の過程における背景分析データの一層の活用を呼び掛けている。

それに加えて、報告書はすべての生徒が専門のアドバイザーから一定の水準キャリアアドバイスを受けるべきであることを推奨している。大学入学の地域格差に取り組むため、サットントラストは、大学が設けているアクセス協定が、社会の主流でなくあまり代表者を出していない地域に焦点を当てるべきとも推奨している。

*オックスブリッジ:ケンブリッジとオックスフォードを合わせてこのように呼ばれる。

**ラッセルグループ:ラッセルグループは、英国国内で最高水準の研究レベルを持つ24大学で構成される団体。

The Sutton Trust:8 SCHOOLS SEND AS MANY PUPILS TO OXBRIDGE AS THREE-QUARTERS OF ALL SCHOOLS